みなさん,こんにちは.
突然ですが,歴史はお好きですか.
好きです!という方もいれば,“苦手”という方もいらっしゃるでしょう.
よく講義の中でも,“むかし,こんなことがあってね” なんて話をはじめるんですが。これがなかなか理解して貰うのは大変です.
例えば,“今から約70年前にね,アメリカでさー,公民権運動があってさぁ...キング牧師がね...”なんて話をはじめるわけ.
そうすると,“そんな昔のこと言われたって”という心の声が聞こえそうな😭さらには,“教え方が悪いんだよ”って言われているような...😭
じゃぁ,“ナイチンゲールって知ってる?”なんていうと,“いまさら何?”と言われそうです.
社会福祉やソーシャルワーカーと何が関係するの?と思うかもしれませんね.
ナイチンゲールの「看護覚え書」というものがあるのですが,なかなかおもしろいことが書いてあります(m(_ _)m).
例えば,「病室における換気と保湿」では,みなさんおわかりの通り,「換気」の重要性を言っているわけです.患者の健康のため新鮮な空気の循環が必要です.まさに,コロナ禍においてこれほど「換気」の重要性を感じたことはないでしょう.「健康管理」には「部屋(病室)の換気」の必要性を説いています.また,「物音」のことでは,音が病人に悪影響を与える場合があるとし,「眠り(安静状態)」を妨害する行為はあってはならないと説いています.
この文章を書いていると,私自身が病院で働きはじめたころ(約40年前のお話)ですが,総婦長(現:総師長)に「廊下を走ってはいけません」「音が響くような上履きを履いてはいけません」「入院している方には不快な音に聞こえますから,気を付けてください」と言われたことを思い出します.
「看護覚え書」では他にも,病院での面会時間帯(設定することで、安静時間帯を設けることにつながる)を設けたりとさまざまことについて書き記しています.
ナイチンゲールは,約100年以上前に活躍していた人です.多くの人は,この世でもっとも有名な看護婦(師)として記憶している人もいるでしょう.もちろん間違いではありません.でももう一つの顔として,「統計学者」という側面もあります.クリミア戦争(クリミアと聞くと毎日ニュースで耳にすると思います)において死亡の原因を統計学的に立証したとあります.劣悪な生活環境が病気を引き起こし,死に至らしめるということです.これをもとに病者の生活環境の改善を訴えました.
ナイチンゲールの功績は,数え切れないほどありますが.........本題に戻しましょう.
それでは、今から100年前の社会福祉分野はどうだったのでしょうか.
イギリスで始まった慈善活動がアメリカに渡り,同じようにその活動は行われていたのですが,やがて道徳観を説くだけでは困窮者の支援が出来ないということに気づきました.結果,人々の社会環境を調べ,さらには支援技術が開発されていきます.1922年にリッチモンドという人が,「WHAT IS SOCIAL CASE WORK」という本を著します.その本の中では,ヘレンケラーとサリバン先生との関係性が書かれています.サリバン先生は,ヘレンケラーという少女の生活に着目しています.詳しくは述べませんが,ヘレンケラーを取り巻く環境に着目し、(資源を)利用し,支援をしていきます.結果,ヘレンケラーは社会の一構成員という地位を再獲得していきます.
ナイチンゲールとリッチモンドに共通することとして,「科学的」「根拠」「環境」「社会変革」などというキーワードが浮かび上がってきます.
個人的には,このところもおもしろいと思っています. ナイチンゲールは看護の基礎を築いた人です. 一方のリッチモンドは,ソーシャルワークの基礎を築いた人です. 出発点は違っているのですが,ソーシャルワークには,ナイチンゲールの視点(環境をみる)は活かされていると思います. また,反対に看護師の業務には,ソーシャルワークの視点が必要とされています.ともに今から100年前に生きた人たちです.「100年前の話でしょ」と思われるかもしれませんが,今私たちが行っていることは,これらのことがベースとなり,出発点となっている気がします.
人を相手にする仕事に必要なのは,偏った見方,偏った専門的知識では駄目なのかもしれません.いろいろな “角度” から支援を必要としている人を “みる” ことが必要なのかもしれません.そして.根拠に基づいてというのは言うまでもありません。
福祉職の為の専門的知識,そもそも人って何だ? というところでの心理職のための専門知識を融合して人を “みる” ことができれば,より深く人を理解することに繋がるのかもしれません.
当時の人たちは,どんな困難があったのか,また,どのようにして乗り越えようとしたのか,何を考えていたのかを知ることは,今の自分の仕事や将来就こうとしている職業の原点を見つめ直すきっかけになるのではないかと思います.
「未来」は,「今」があってのものです.「過去」があっての「今」でもあります.「今」を知るためには「過去」を知ることが必要だし、「未来」を想像するためにも必要だと思っています.
みなさんは,どう思われますか?
「今から約70年前にね,アメリカでさー,公民権運動があってさぁ...キング牧師がね...」
さて,70年前の出来事は、今のソーシャルワークにどのように影響を及ぼしているのか,繋がっているのか...タイムスリップして調べてみてはいかがでしょう!
今年のゼミテーマのひとつにしようかな.
※Florence Nightingale (1820-1910)
※Mary Richmond(1861−1928)
※Helen Adams Keller(1880 - 1968)