心理福祉学科教員の結城です。
今回は,私が専門とする社会心理学という学問についてみなさんに紹介したいと思います。
突然ですが,以下のような場面を想像してみてください。
あなたはお腹が空いたので,コンビニにお昼ご飯を買いに行く途中です。家からコンビニまでは5mほどの短い横断歩道があり,横断歩道の信号は「赤」を示しています。車が通る気配がないので,周りの人は信号を無視して横断歩道を渡っているようです。
さて,この状況であなたは横断歩道の信号を「守って」立ち止まりますか?それとも「守らず」渡りますか?
この状況を見事に捉えた言葉に,「赤信号 みんなで渡れば 怖くない」という有名なものがあります。この言葉は,1980年頃に漫才コンビ「ツービート」(ビートたけし氏とビートきよし氏によるコンビ)が流行らせたものです。さて,この言葉を上記の例に当てはめてみます。「怖くない」という言葉は,主に二つの意味があるように思います。一つは,「大勢で横断歩道を渡れば,車が人に気付いて車が止まってくれるだろう」という意味。もうひとつは,「ルールを破っても,自分だけじゃなく他の人もやっているし大丈夫だろう」という意味です。
社会心理学では,後者の人間の心理を「リスキーシフト」と言います。リスキーシフトとは,認知バイアス(直感や先入観によって合理的な判断ではなくなること)の一種で,人は個人で判断を下すよりも集団で判断を下す場合の方が危険な決定をしやすいというものです。つまり,個人であれば「ルールを破るのはマズいな」とか「車にはねられるかも知れない」と感じる場合でも,集団の場合は「ルールを破っても自分だけじゃなくみんなが怒られるんだし」や「まぁ,みんなが渡っているから大丈夫だろう」と楽観的に考えてしまいがちになるということです。
冒頭の質問に,あなたはどう答えたでしょうか? もし周りの人がきちんと横断歩道の赤信号を守っていたらあなたも信号を守り,周りの人が信号を無視して横断歩道を渡っていたらあなたも信号を守らない可能性はないでしょうか(当然,交通ルールは守らなければならないので,渡ってはいけませんが)?
このように,同じ人物でも置かれた状況(環境)が異なることによって,それに応じて考え方,感じ方,行動までも変化し得るのです。そして,そのような個人と個人,個人と集団,個人と社会がお互いに影響を与える過程を研究する学問が社会心理学です。
現在,結城ゼミでは3年生5名,4年生12名とともに,「日常における心理学」とも呼ばれる社会心理学について研究しています。結城ゼミに所属して,日常の「なぜ?」を研究してみませんか?